リヨニカ日記帳vol.9 忘れないホワイトデー

ホワイトデーになると、思い出す話がある。

基本的に、私はバレンタインデーを楽しみたい!
義理チョコはあげないけど、バレンタインデー前後に男の子と会う場合や好きなひとには、チョコレートを渡したくなる。
お歳暮やお中元は送ったことがないけれど、バレンタインデーは、ちょっぴりそのかわりみたい。
好きなひとやお世話になった人に、甘いものをプレゼントしても許される、そんな嬉しい日。

4年前のバレンタインデー。
私は、ある上司に渡すぞ!と決めていた。

お酒飲みだけど、甘いものも好きな上司。
だいたい歳上の男性と飲みに行くと、デザートを頼むのは私だけ。
でも、その上司は「俺も食べるかな」という数少ない人だった。

そんな上司が、以前何気なく話していた言葉があった。
「この前、マツコが出ている夜の番組で、1粒何千円とかするチョコが出ててさ〜。一度でいいから食べてみたいよな。」
私は、チョコレートがそこまで好きなタイプではないので、ニコニコしながら楽しそうに話していた上司が印象に残っていた。

それまでチョコを渡すなんてあまりしたことがなかったけれど、バレンタインフェアの会場をぐるぐるしながら、何を渡そうか迷った。
相手のことを考えて、迷う時間が楽しいのよね。

札幌でのバレンタインフェアには、テレビでやるみたいなとびきり高いチョコレートはなかったけど、箱に数粒しか入っていない、1粒1000円台のチョコレートをセレクトした。

バレンタイン当日。
全くやましい気持ちはないけれど、他のひとには渡さないし、上司も自分だけがもらうのを知られたくはないでしょうから、こっそり渡すことを任務とした。
ただ、部署が違ったので、上司がいつ帰るかも分からず、渡せるタイミングがなかった。

今日は諦めて、明日にするか…

バレンタインを楽しみたい勢としては、バレンタイン当日に渡したい気持ちがあったけど、やっぱり人前で1人にだけ渡すのは違うので仕方ない。

そう諦めていた帰り道、駅までの1本道で上司を見つけた。
上司は反対方向の電車なので、駅までが勝負。
私は、全力で走った。

駅で上司に声をかけた私は、息が上がっていて、やましいことではないのに若干ドキドキしていた。
平静を装いながら、ドキドキしちゃっている感じ。
この感じを楽しめるのが、バレンタインデーの好きなところ。
恋愛じゃないのに、まるで恋愛中のような擬似体験ができちゃう。

「次長にバレンタインのチョコもってきました!」

タイムリミットぎりぎりで上司に会えた私は、駅のホームでチョコを渡す。

「次長のためを思って、一生懸命手作りしました…」

恩着せがましい言葉を添えてみた。
袋を開ければ手作りではないことが一目瞭然なので、恥ずかしいのでお家で開けてください、と言いながらチョコレートを渡した。

上司のお礼を聞いて別れた後、ミッションクリアした私はテンションがあがっていた。
嬉しいな〜という気持ちとともに、帰宅して箱を見たらどんな反応するんだろうな〜とも思い楽しかった。

私の中のバレンタインデーは、これで終わり。
渡すまでのワクワクとドキドキが全てなのだ。
渡してしまえばもうイベントは終了で、全て忘れてしまう。
その後上司に会った際「1粒ずつ楽しみに食べてるよ〜」みたいなことを言ってたのは覚えている。

世間的にも、ホワイトデーはイベント感が薄い気がする。
お礼をもらってから「ああ、ホワイトデーか」と、なりがち。
そもそもバレンタインデーにチョコを渡す人は、お礼なんて求めてないんじゃないだろうか。

そんな私へ、ある日曜日に知らない番号から着信があった。
出てみると札幌のケーキ屋さんから、「●●様(上司)からケーキのご注文をいただいていますが、ご在宅ですか?」という旨。
そう、何の予告もなく、ケーキが届いたの!

これが、本当のサプライズ。
だって私は、びっくりしちゃったからね。
「うわ〜、やられた〜」と、悔しささえ出てくる。
チクショ〜、と言いつつにやにやしながら上司にお礼の電話をかけた。

「おー、届いたか!よかった!」
そんなような、ありきたりな会話をしたと思うけど、正直よく覚えていない。
自分がどんなことを言ったのかも、覚えていない。
私が覚えてるのは、上司が言った次の言葉だけ。

「手作りですから」

ホワイトデーには少し思い出す。
私みたいな小娘より、何枚も上手な上司のお話。

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この記事を書いた人

北海道生まれ北海道育ちのいもっ子。
リヨニカ学習帳は、りつよが日本語を練習するためのブログです。

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